今回は、アルツハイマー型認知症の対応②についてお伝えします!
介護を拒否する
原因と対応策
介護拒否の多くは、不安からくるものです。
本人が安心できるように工夫してあげると、多くの場合は症状も収まります。
介助をする際は、「何のために何を行うか」をわかりやすい表現で説明しましょう。
本人が納得できれば症状も解消されるはずです。
例えば、食事を嫌がるときは、以前使用していた食器や箸を使うと安心することがあります。
少しの環境の変化でも不安になることがあるので気をつけましょう。
NGな対応例
介護される側の気持ちを考えない
介護する側の理屈で介護を押し付ける
お風呂に入らない
原因と対応策
認知症によって記憶障害の症状が現れると、お風呂に入ったかどうかもわからなくなります。
また、思考力や判断力が低下するため、自分の身体が汚くても、客観的にそのことを理解できにくくなります。
お風呂に入る必要性を感じなくなり、拒否するようになってしまうのです。
対策は、お風呂に入ることを強調せず、「薬を塗る」「足の爪を切りたい」などの理由をつけて、浴室や脱衣所まで誘導します。
その後、「浴槽にお湯を入れたのでどうですか」と誘ってみましょう。
また、「服、汚れているのでこちらで着替えましょう」と言ったり、
「ひげそり持っている方であれば、こちらでひげをそりましょう」と誘導するのも効果的です。
一人であれば「入浴剤などを入れて、今日は○○の湯ですよ!良かったらどうですか?」と話したり、「ご家族の方からせっかくだから入ってきて!と話されますよ」とか様々な言葉があります。
NGな対応例
「汚いから入ってください」など、気分を害するような誘い方をする
無理やり服を脱がせたり、お風呂に入らせたりする
トイレに失敗する
原因と対応策
認知症になると尿意や便意を感じづらくなります。
また、尿意を感じても、その意思を伝えられなくなります。
頻繁にトイレに誘うと、本人にとってはその気もないのに連れていかれることになり、不可解で気味悪く感じます。
そのような体験が重なることで、トイレに行くことを拒否するようになるのです。
トイレの時間や便意を感じる予兆を記録しておき、タイミングを見計らって誘うようにすれば、
次第に改善することが見込まれます。
NGな対応例
トイレに失敗したことを叱り、自尊心を傷つける
介護者側の都合だけでトイレに誘う
不潔な行為
原因と対応策
認知症が進むとにおいを感じにくくなります。
便が漏れて便臭が酷くても気がつかないことが多く、弄便はおむつの中の便を手で触ったり、その手で服や家具などを触ったりする行為です。
様々な原因があり、おむつが気持ち悪いと自分で便を処理しようとします。
手に便が付着して対処法がわからなくなると、おむつを破り捨て近くのもので拭き取ってしまうのです。
また失禁に対する羞恥心から家族に隠そうと、自分で処理するのも弄便の原因の一つです。
弄便に悪意はありません。
責めると弄便が悪化するので、「気がつかなくてごめんなさい」
「すぐに綺麗にしましょう」など優しい声がけを行います。
おむつ交換の回数を増やすといったトイレ習慣の見直しも効果的です。
NGな対応例
「汚いでしょ」「なんで触るの」と否定的な言葉を使う
大きな声を出して怒鳴る、感情的に叱る
弄便を防ぐ目的で本人に身体拘束をする
手が汚いからと無理やりお風呂場へ連れて行き、洗い流す
手についた便をそのままにする
夜になると騒ぐ
原因と対応策
認知症になると不安な気持ちから夜に眠れなくなり、昼と夜とが逆転して不眠になる場合があります。
不安な気持ちを取り除き、規則正しい生活を促すと改善が期待できます。
日中はできるだけ日の光が差し込む明るい部屋で過ごし、可能であれば散歩やデイサービスに出かけるようにしましょう。
夜にぐっすり眠れるよう昼間によく身体を動かしたり、寝室の照明や音、インテリアなどを落ち着ける雰囲気のものに変えたりするなどの対策も効果的です。
NGな対応例
夜に眠らないことを叱ったり、不安を煽るような言動をとる
昼間に好きなだけ眠らせたり、不規則な生活を許容する
訪問販売で大量購入してしまう
原因と対応策
認知症によって判断力が低下すると、訪問販売によって悪質商法に騙される可能性があります。
相手の言うことの善し悪しが判断できず、言われるがままに契約をしてしまうのです。
自分でお金の管理ができなくなっている場合は、特に注意が必要です。
人とのつながりがなく、孤独を感じている高齢者はなおさら騙される可能性が高くなります。
対策として、お金の管理を家族がしたり、成年後見制度を利用したりするのが有効です。
NGな対応例
騙されたことをなじったり、叱責したりする
本人の意思を無視して、お金が使えないような状況にする
火の始末を忘れる
原因と対応策
コンロの⽕をつけたまま、料理をしようとしていたことさえ忘れてしまい、⽕事につながってしまう・・・
といったことも起こる可能性があります。
本⼈は⾃分が⽕をつけたことや料理をしようとしていたこと自体を忘れているので、
⽕事が起こってしまってもその理由がわかりません。事前に対策をしておくことが大切です。
安全のために、室内には火災警報器を設置し、⾃動消⽕機能のあるコンロやIH式のものを使うようにしましょう。
NGな対応例
料理を禁止する
怒ったり責めたりする
何をする時間かわからない
原因と対応策
時計を⾒て「何時何分」と読むことができるのにもかかわらず、何の時間なのかを問われるとわからない場合がよくあります。
「12時だからお昼」というのがわからないということを理解して、「お昼の時間ですよ」など声をかけるようにしましょう。
今は何をする時間なのかを伝えるよう、日々のコミュニケーションのとり⽅を⼯夫しましょう。
NGな対応例
イライラして怒る
わからないことを馬鹿にする
認知症の方とのコミュニケーションで気をつけること
認知症の人は常に不安を抱えながら生活しています。
そのため、日頃の生活のなかでできるだけ不安を取り除くように努めることで、多くの症状は改善されます。
普段の何気ないコミュニケーションから、気をつけて接するようにしましょう。
食事でも入浴でも、何かを始めるときは本人にわかりやすい言葉で伝え、忘れることも想定しながら繰り返し伝えます。
また、本人が自分なりに考えて口にしたことは、たとえそれが間違っていても、決して否定することなく受け入れることも大切です。
「でも」「だけど」という言葉にも要注意です。
たとえ失敗したり、できると言ってできなかったりした場合も、責めることなく、
自尊心を傷つけるような言動には気をつけましょう。
日々の言動、行動は本人が生きるためのサインです。
いかに気づけるかが尊厳を守るカギとなります。